地域冷暖房×複合ビル

地下4階、地上18階の複合ビルであるJR南新宿ビル。上層階にはオフィスが、低層階にはメーカーのショールームやフィットネスクラブ、さらに保育施設も設置されるなど多彩なテナントが入居しています。各テナントの幅広いニーズに応える「ビル管理」という視点から、地域冷暖房のメリットについて、このビルを管理されている(株)ジェイアール東日本ビルディングの小沼様にお話をうかがいました。

安定したエネルギー供給や
スペース効率の向上など、
様々なメリットを実感できるシステムです。

株式会社ジェイアール東日本ビルディング 第五ビル事業部
小沼 隆弘
(インタビュー:2013年10月)

小沼 隆弘様

Q1. 複合ビルならではのエネルギー管理の難しさはありますか。

各テナントでエネルギー消費のピークが異なっているのがもっとも気を遣う点です。午前9時始業のオフィスならば、ピークは午前8〜9時になります。一方、フィットネスクラブは午後6時以降に利用が増えるため、エネルギー消費のピークも夕方以降になります。また、季節ごとのエネルギー使用量にも大きな差があります。夏場は午前10時頃にオフィスに日差しが入り、もう一段エネルギー使用量が増えます。これらを勘案してエネルギーを効率的に利用するきめ細やかな管理が必要になります。

Q2. フィットネスクラブ(JEXER)と保育施設が入居されていますが、
特別な管理が必要ですか。

オフィスとは別の管理が必要になるのがフィットネスクラブや保育施設です。フィットネスクラブにはプールやお風呂、サウナの熱源も供給しています。温水プールは設定温度を保つために24時間態勢で温度管理をするなど、オフィスに比べるとエネルギーの負荷は大きいです。また、保育施設は対象者が園児であることなどから、こまめな温度管理が要求されます。園庭に面しているフロアは窓を開けることも多いため、オフィスとは気遣う点が異なります。

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Q3. 地域冷暖房にはどのようなメリットを感じていますか。

地域冷暖房を導入したことによるメリットの一つが省スペース化です。熱源供給をビル自前で行う必要がないため、熱源室を他のスペースに活用できます。同時にビル建設時の設備投資コストを抑えられるのも大きなメリットです。さらに熱源供給に関する保守・管理などの対応が不要なので、管理スタッフの作業効率化にもつながっています。

Q4. 省スペースの具体的な活用事例を教えてください。

当ビルの活用事例としては駐車場への利用があります。地下4階から地下1階までを駐車場として利用していますが、地域冷暖房を導入したため、他の管理ビルに比べて概ね1階分の駐車スペースを拡張できました。また、屋上にも冷暖房に関する設備が必要ないため、太陽光パネルを設置してスペースを有効活用できています。これも地域冷暖房ならではのメリットだと考えます。

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Q5. 各テナントからの空調管理への評判はいかがですか。

ビル管理法によって定められた温度や湿度で管理していますが、テナントによって温度設定には微妙な調整が必要になります。例えば外回りの仕事が多い企業では、やや低めに温度設定することがあります。一方、終日デスクワーク中心のテナントは少し高めの温度設定を心がけるなど、各テナントから要望を把握し、基準温度を設定しています。また、風速計を使って何度の風がどの程度吹いているかも定期的に検査しており、テナントの要望に添った細かな管理ができていると自負しています。

Q6. 空調管理がテナントの執務環境に影響することを実感されますか。

ビル竣工以来約1年の管理の中で、空調に関するデータが数多く蓄積されており、入居者からデータの閲覧要望をいただく場合があります。これは、安定した空調管理が職場の執務環境に好影響を与えると判断されているためだと思います。地域冷暖房による安定した空調実績は、各テナントへの快適な執務環境提供の証と言えるでしょう。また、当ビルで蓄積されたデータは、当社の開発部署と情報共有することで、開発予定のビルや他の管理ビルにも活用されています。

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Q7. JR南新宿ビルの環境活動についてお聞かせください。

当ビルで取組んでいる環境施策としては、LED照明やLow-Eガラス、ブラインドの角度を変える陽光センサーを採用することで、照明や空調に関するエネルギーの効率化に役立てています。また、4階テラスに設けた庭園での緑化の取組みや、先にも紹介しました太陽光パネルによる自家発電にも力を入れています。

Q8. 最後に、ビル管理という視点から見た地域冷暖房の特徴とは、
どのような点が挙げられますか。

東日本大震災でも供給が停止することがなかった地域冷暖房は安定性の高いシステムです。安定した供給はテナントの皆さまにも安心感を与えます。また、熱源の管理から解放されることで設備スタッフの負担も一般的なビルに比べると減っています。その分、別の作業を手厚くしていくことで、各テナントへの一層のサービス向上に努めていきたいと思っています。

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