地域冷暖房×オフィス

新宿駅南口。様々なビルが林立する中でも、ひと際目を引くのが、白を基調とした美しい外観の小田急サザンタワー。1998年の竣工時から地域冷暖房を導入されている同ビルでは、どんなメリットが得られてきたのでしょうか。 小田急電鉄(株)の髙津 秀昭様にビル運営という観点から、お話をうかがいました。

コスト、環境面、高品質なサービス。
地域冷暖房は、あらゆる面で
メリットがいっぱいです。

小田急電鉄株式会社 生活サービス事業本部 SC事業部
高津 秀昭
(インタビュー:2011年4月)

高津 秀昭様

Q1. 小田急サザンタワーは竣工時から地域冷暖房を導入されましたが、
初めての試みだったのでしょうか。

当社のホテルに地域冷暖房を導入したのは、ハイアット リージェンシー 東京(1980年開業:旧ホテルセンチュリーハイアット)に次いで2例目ですね。

Q2. 初めて地域冷暖房をお知りになった時は、
どんな印象を持たれましたか。

電気やガスと違って、冷水や蒸気を配管で取り込み、エネルギーとして利用するというシステムは、非常に画期的だなと思ったことを覚えています。

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Q3. 地域冷暖房のどの点に着目し、導入されたのですか。

ボイラーや冷凍機がいらないことが最大の魅力でした。ボイラーや冷凍機を置くと、わざわざ機械室を造らなければなりませんが、それが必要ないため、その分のスペースを有効に活用することができます。賃貸面積が増え、収入源に結びつけることができたメリットは、本当に大きかったですね。

Q4. 具体的に、どのくらいのスペースを
有効活用することができたのですか。

ボイラー3台分と冷凍機4台分くらいですから、ワンフロアの半分くらいでしょうか。当ビルは地下4階までありますが、地域冷暖房を導入していなければ、地下5階まで造る必要があったかもしれません。

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Q5. その他のコストについては、いかがですか。

ライフサイクルコストも大幅に削減できました。ボイラーや冷凍機の更新費があると、それだけで数億円から数十億円という金額になってしまいます。ですから、この更新費がないことで、本当に助かっています。 また、各ビルに冷凍機などがある、従来の個別分散的な熱源方式だと、電力使用量のピークに基本料金を設定しないといけないので、必然的に基本料金が高くなってしまうんです。けれども、地域冷暖房の場合は、割安の夜間電力も利用できるから、基本料金を下げることができます。おそらく、地域冷暖房方式ではない同規模のビルに比べて、当ビルは、半分くらいの契約電力でまかなっていると思いますよ。

Q6. 小田急サザンタワーはオフィスビルでもありますが、テナントを
誘致する際、地域冷暖房ならではのアピールポイントはありますか。

やはり「24時間365日、自由に冷暖房できること」が一番だと思います。当ビルには常に温水・冷水・蒸気が供給されていますので、夏に暖房・冬に冷房をかけることもできます。その点は、テナント様を誘致する際にアピールしています。

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Q7. 夏に暖房・冬に冷房をかけるというのは、
どのようなシチュエーションですか。

例えばサーバールームですね。サーバーは熱を持ってしまうため、冬でも冷房を必要とされる企業様は少なくありません。 また夏場でも、梅雨時などは寒いと感じる方が意外と多いため、軽めの暖房を入れる場合があります。

Q8. 導入して良かった点を、具体的に教えてください。

ボイラーや冷凍機がないため、メンテナンスが不要なこと。また24時間、休みなくエネルギーを供給できること。従来のビルでは、テナント様が業務をされていない深夜や早朝に、空調を止めてメンテナンスや点検を行います。 ところが、外資系企業様の場合、日本が夜でも現地は昼間。だから深夜でも業務をされることがあるんです。そんな時にメンテナンスはできませんので、やはり24時間365日、空調が使えるというのは、とても大事なサービスだと思います。おかげさまで、クレームをいただいたことは全くありません。

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Q9. 地域冷暖房は地球環境への貢献にもつながりますね。

東京都の環境確保条例では、当ビルの規模に対して、温室効果ガスの排出を基準年に比べて8%削減と義務づけていますが、地域冷暖房を導入していることで6%削減に緩和されています。これはつまり、地域冷暖房を導入した時点で、地球環境へ貢献していることの証でもあるんです。地域冷暖房は私たちにとっても大きなメリットですが、それ以上に私たちの活動が、地球環境に貢献できていることに喜びを感じますね。

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